◉南都・大安寺歴史講座第四弾◉ |
わが国最初の官立寺院である大安寺の宗教的意義や文化的意義を、
様々な研究成果により再認識する講座の単行本化 |
「大安寺伽藍縁起并流記資財帳」を丹念に読み込み、奈良時代の大安寺が行った宗教・経済活動の実体を探究。安置仏像の全貌と歴史的背景、それを踏まえた道慈の事績解明、20点余りの図版による食堂など境内の周辺施設の復原は、大安寺研究に新たな問題を提起する。 |
|
奈良時代の大安寺
資財帳の考古学的探求
大安寺歴史講座4
上原 眞人 著/大安寺 編 |
B6判・並製・198ページ |
定価
(本体1,800円+税 ) |
ISBN978-4-86249-407-8 |
2021年 2月 刊行 |
|
はじめに
序 章 『大安寺資財帳』分析の方法と視角……話を進めるにあたって/『大安寺資財帳』分析の意義
第一章 寺院資財帳とは何か……『大安寺資財帳』の基本構成と本書の主題/寺院縁起・資財帳の起源/恒式となった「天平十九年帳」の作成手順/資財帳の変貌/箱や袋に入った資産/所在を確認できる資財帳への変貌
第二章 縁起はなぜ「大安寺」呼称を無視したのか……縁起読解・解説Ⅰ/縁起読解・解説Ⅱ/縁起読解・解説Ⅲ/縁起読解・解説Ⅳ/縁起解説Ⅴ―天武朝大官大寺と文武朝大官大寺の区別/縁起解説Ⅵ―文武朝大官大寺の造営経緯/縁起解説Ⅶ―文武朝大官大寺の焼亡年代/縁起に記された寺々/古代寺院の呼称/大安寺前身寺院の寺号/「大安寺」名の成立Ⅰ/「大安寺」名の成立Ⅱ/寺院の条件/寺院公認の象徴/大安寺における寺額と幡/大安寺灌頂幡の由来/幡の寄贈者/銘にみる幡の変質/「大安寺」成立の背景Ⅰ/「大安寺」成立の背景Ⅱ
第三章 大安寺の基本財産となる仏像……大安寺の仏たち/リストを修正する時の原則/仏像リスト修正私案/< 仏像リスト修正私案> 解説/「霊鷲山繍仏図」/「霊鷲山繍仏図」の安置方法/「霊鷲山繍仏図」の史的評価/天平期の繍仏図二帳/仏像のカウント単位/金堂本尊とそれを囲む仏像群/大安寺釈迦如来の信仰世界/古代寺院金堂の本尊/金堂本尊は天智天皇の発願か/丈六即像梱包材/金堂本尊はもと大津宮にあったのかⅠ/金堂本尊はもと大津宮にあったのかⅡ/仏像以外に飛鳥藤原京地域から運ばれたもの/もう一つの丈六即像の行方/講堂に安置した仏像Ⅰ/講堂に安置した仏像Ⅱ/講堂に安置した仏像Ⅲ/回廊や門に安置した仏像Ⅰ/回廊や門に安置した仏像Ⅱ
第四章 道慈の「改造大寺」とは何か……道慈が大安寺を改造したとする史料/塔院地を確保したのは道慈か/道慈は大安寺の中心伽藍を改造したか/大安寺式軒瓦は道慈の瓦ではない/東寺造営に関与した空海の場合/道慈を「无妙工巧」と讃えたのは建築技術者か/天平期の匠手とは誰か/道慈の功績Ⅰ―寺領獲得/大安寺領が東国に多い理由/道慈の功績Ⅱ―大般若会創始/大安寺大般若会の舞台装置/道慈の功績Ⅲ―釈迦信仰整備/道慈の功績Ⅳ―華厳導入/道慈は何をめざしたのか
第五章 大安寺で最も裕福だった僧の運命……『大安寺資財帳』に登録された聖僧物/法会における聖僧の座/聖僧像の有無と安置場所・安置年代/聖僧はいつから重視されたのか/資財帳にみる布薩と如意/布薩行事で如意を持つ僧/布薩と悔過会/聖僧の行方
第六章 大安寺食堂はどこにあったのか……『大安寺資財帳』に登録された寺院地/平城京のなかの大安寺Ⅰ/平城京のなかの大安寺Ⅱ/建物施設を復原する原則―僧房の場合/食堂位置に関する二つの見解―講堂の東か北か/施設は時計回りに記述されているか/食堂推定地の発掘成果/食堂院の復原―一坊半に収まる建物施設の全体像Ⅰ/食堂院の機能―一坊半に収まる建物施設の全体像Ⅱ/食堂前廡廊の機能―一坊半に収まる建物施設の全体像Ⅲ/禅院の構造と機能―一坊半に収まる建物施設の全体像Ⅳ/禅院の所在地―飛鳥寺や広隆寺からの類推/大安寺政所院と温室院―一坊半と関係が深い建物施設/機能的かつ 『大安寺資財帳』に忠実に諸院を配置する/寺院地北部に禅院食堂并太衆院は収まらない/発掘を踏まえた「寺院地西北部の食堂」説/食堂推定地の発掘成果―北方説の場合/食堂推定地の発掘成果―東方説の場合
おわりに
参考文献 |
|
うえはら・まひと…1949年生ま。’79年京都大学大学院文学研究科博士課単位取得退学(考古学専攻)。’79~’96年、奈良国立文化財研究所研究員、同主任研究官。’96年~2016年、京都大学大学院文学研究科歴史文化学系教授(考古学)。2016年京都大学名誉教授、(公財)辰馬考古資料館館長。2019年~(公財)黒川古文化研究所所長。主要著書に『蓮華紋』日本の美術359号(至文堂
1996)、『瓦を読む―歴史発掘11』(講談社 1997)、『瓦・木器・寺院-ここまでの研究 これからの考古学』(すいれん舎2015)、『古代寺院の生き残り戦略-資財帳が語る平安時代の広隆寺』(柳原出版
2020)など。 |
|