ブルガリアの社会主義期からポスト社会主義期にかけて、ヨーグルトをめぐる様々な言説の生成と展開をたどりながら、伝統的な食品であったヨーグルトが、日本での受容を経て国民表象へと変化していく過程を明らかにする。バルカン半島の小国家、ブルガリアがソ連やEU
の「衛星国」として軽視されてきた歴史を背景に、ヨーグルトを架け橋とした日本との繋がりを通して、自民族的な世界観を形成してきた経緯をたどる。 |
◉2013年・2014年度比較文明学会研究奨励賞受賞◉ |
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生成された言説とその展開 |
ヨーグルトとブルガリア
マリア ヨトヴァ 著 |
A5判・上製・313ページ |
定価 本体5,000円+税
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ISBN978-4-86249-211-1 |
2012年 11月 刊行 |
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◉主要目次
序論 本書の目的と問題の所在
第一節 本書の目的
第二節 本書の背景と問題の所在
(1)研究対象としての「食」
(2)社会主義体制下における食の意味
(3)ポスト社会主義期における食の新たな意味づけ
(4)ブルガリアの食研究
第三節 理論的視座と方法論
(1)ヨーグルトをめぐるブルガリアの自民族中心主義
(2)ヨーグルトをめぐる諸言説
第四節 調査の概要と本書の構成
(1)調査の概要
(2)本書の構成
第一章 科学研究におけるヨーグルトの「長寿食」言説と「ブルガリア起源」言説
第一節 研究対象としての乳製品
(1)人間の「命綱」としての乳製品
(2)「商品」としての乳製品
第二節 ブルガリアの伝統文化としてのヨーグルト
(1)乳加工システムと乳製品
(2)ヨーグルトの伝統文化
第三節 言説の生成装置としてのヨーグルト研究
(1)ヨーグルトをめぐる「不老長寿説」の誕生
(2)ヨーグルトの「ブルガリア起源説」の確立
<まとめ> “ブルガリアヨーグルト” という言説の誕生
第二章 社会主義期における「人民食」言説と「技術ナンバーワン」言説
第一節 社会主義的近代化にともなう社会変化
(1)社会主義以前のブルガリア
(2)社会主義化していくブルガリア
第二節 ヨーグルトをめぐる「人民食」言説
(1)乳加工システムの近代的変容
(2)国家政策におけるヨーグルト
第三節 ヨーグルトの「技術ナンバーワン」言説
(1)「技術ナンバーワン」言説の生成経緯
(2)「技術ナンバーワン」言説の普及活動
(3)「人民食」言説と「技術ナンバーワン」言説の対立
第四節 テクノクラートが回顧する「技術ナンバーワン」言説
(1)“ブルガリアヨーグルト” の成功物語
(2)ブルガリア乳業の「黄金時代」
(3)ブルガリア乳業の「晩年」
<まとめ>“ブルガリアヨーグルト” という言説の確立
第三章 日本における「聖地ブルガリア」言説と「企業ブランド」言説
第一節 日本における乳食文化の歴史
第二節 愛好者間における「聖地ブルガリア」言説
(1)園田天光光と“ブルガリアヨーグルト” との出会い
(2)「聖地ブルガリア」言説の誕生
(3)「聖地ブルガリア」言説の意味
第三節 大阪万博におけるヨーグルトの「発見」
(1)ブルガリア館の展示方法
(2)ブルガリア館の広報活動
第四節 明治乳業による「企業ブランド」言説
(1)「本場の味」の誕生
(2)本物らしさの演出
(3)ブランド言説の拡大
<まとめ>“ブルガリアヨーグルト” の国際化
第四章 ポスト社会主義期におけるヨーグルトの諸言説
第一節 民主化以降の乳製品の生産と消費
(1)EU 基準に苦しむ農家
(2)EU 規制に苛まれる企業
(3)国家規格をもとめる消費者
第二節 国営企業による「日本ブランド」言説
(1)「日本ブランド言説」のルーツ
(2)「日本ブランド」言説の流布
第三節 多国籍企業による「祖母の味」言説
(1)「祖母の味」言説の誕生
(2)「祖母の味」言説の意味
第四節 ベテラン社員による「乳業の真珠」言説
(1)ベテラン社員の動向
(2)多国籍企業に抵抗する「乳業の真珠」言説
第五節 地元の女性による「ホームメイド一番」言説
(1)「おばあちゃん」と「ホームメイド一番」言説
(2)「祖母の味」言説に抵抗する「ホームメイド一番」言説
(3)「おばあちゃん」の光と陰
<まとめ>“ブルガリアヨーグルト” の再帰性
結 論
(1)ナショナル・アイデンティティとしての伝統食品
(2)自国文化の独自性としてのヨーグルト
(3)ブルガリアの「重要な他者」としての日本
参考文献
索 引 |
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Maria YOTOVA…1978年ブルガリア・ボテフグラッド生まれ。2001年埼玉大学経済学部日本語日本文化研究生に国費留学生として来日。ブルガリア、JICA事務所カザンラク地域活性化プロジェクト広報・通訳。2006年総合研究大学院大学文化科学研究科比較文化学専攻に国費留学研究生として来日。2011年同学にて博士号取得。現在国立民族学博物館民族文化研究部外来研究員、滋賀県立大学人間文化学部非常勤講師。 |