魚類の中でハゼ科に次いで種多様性を誇るベラ科魚類。全世界で70 属509 種が知られているが、その中日本産の36 属151 種を網羅した日本初の図鑑。あのナポレオンフィッシュもベラ科の魚です。

A Photographic Guide to Wrasses of Japan
日本のベラ大図鑑

写真・文=西山一彦 
監修=本村浩之
A4変型判・ハードカバー・302頁
本体12,000円+税
ISBN978-4-86249-200-5
 2012年 8月下旬発売予定
  エメラルドグリーンに輝く珊瑚礁の海の中を覗くと、色彩美あふれる絢爛たる熱帯魚たちが視界一面に広がって乱舞している姿を見ることができる。彩飾豊かな魚たちの中で優占するのは、やや細長い体で、胸鰭のみを使って泳いでいるベラの仲間だ。条鰭綱スズキ目ベラ科に属する魚は全世界の温帯から熱帯域に広く分布し、現在70属509種が知られている。これは魚類の中でハゼ科に次ぐ種数であり、脊椎動物の中でも科という分類単位において第2位の種多様性を誇る。種数のみならず個体数も多いため、西部太平洋における年間の漁獲量は1万~2万トンに達する。

 その種多様性の高さと比例して、ベラ科魚類の形態や生態も多様である。全長5cmに満たない種から一般にはナポレオンフィッシュという呼称で有名な全長170cmに達する(229cmという信憑性が薄い記録もある)メガネモチノウオ、体が著しく長細いカマスベラや体高が高く側扁するテンス、吻が管のように細長く突出しているクギベラや折り畳み式の口が捕食時に著しく伸長するギチベラ、動物プランクトンや魚類を捕食する種や他の魚の体表の寄生虫を食べるクリーナーのホンソメワケベラなど枚挙にいとまがない。

 生息環境も多様で、珊瑚礁をはじめ、岩礁、砂底、藻場など幅広い環境に種ごとに適応し、さらにいくつかの種では成長段階によって生息環境選択の嗜好性が変化する。ただし、泥底や汽水域には少ないようだ。生息水深もごく浅いタイドプールから沖合の100mまでとその適応範囲は広い。

 ベラ科魚類の最大の特徴の一つは、多くの種において性転換することであろう。成長に伴って雌から雄へ性が変化するのである(これを雌性先熟という)。一夫多妻的な配偶システムをもつ種において雌性先熟が進化すると考えられており、ベラ科魚類も多くの種がハレムを形成する。フィールドでベラ科魚類の同定をする際には体色が重要な決め手となるが、多くの種において体色が性転換と連動して劇的に変化するため、本科魚類の同定には相当な知識と経験が必要である。これまでに数多の海水魚図鑑が出版されているが、そのほとんどがベラ科魚類の1種につき1枚の写真が掲載されているに過ぎない。しかもほんの数種が掲載されているだけで、実際の同定にはほとんど役に立たない。そのため、誰でも容易に、そして正確に同定することが可能な各成長段階や雌雄それぞれの色彩パターンが掲載されているベラ科魚類全種の図鑑の出版が求められていた。このような背景の中、企画・編集されたのが本書である。

 日本にはおよそ150種(学名と標準和名が両方とも付けられているのは145種)のベラ科魚類が生息している。本書は日本産ベラ科魚類のすべての種の生態写真が掲載されており、その多くは幼魚~成魚、雌雄など可能な限りの写真が1種につき複数枚掲載されている。本書は、絵合わせによる同定が可能な視覚的に美しい図鑑というだけではなく、各写真の下に撮影場所や水深などの情報も記載されているため、学術的にもひじょうに価値が高い。さらに特筆すべきは、本書に掲載されているすべての生態写真が著者の西山さんによって撮影されたものであるということだ。

……彼のベラに対する並々ならぬ熱意と写真への人一倍のこだわりがプロの水中写真家顔負けの美しい生態写真の撮影を可能にしたのであろう。本書の写真のキャプションをみて頂きたい。その撮影場所の記述から、西山さんが仕事の合間を縫って、ベラを求めて日本中の海を潜っていることが分かる。本書は著者の情熱がこもった一冊なのだ。本書は魚が好きな人はもちろんのこと、アマチュアからプロのダイバー、魚類研究者や海洋生物研究者まで多くの人の手元に置いて頂きたい一冊である。

                                                                                   ・・・本村浩之(監修者)「まえがき」より
 
◉日本産ベラ科魚類のすべて、36属、151 種を収録
◉オールカラー約1090 点の生態写真をすべて筆者ひとりで撮影
◉幼魚、若魚、雄、雌、成魚、老成魚、性転換中個体、婚姻色等、可能なかぎり一種
 につき複数枚の写真を掲載
◉各成長段階や雄雌それぞれの色彩パターンが掲載されているので、誰でも容易にしか
 も正確に同定できる
◉絵合わせによる同定も可能な美しい図鑑
◉解説は、先ず標準和名、学名(記載者と記載年を含む)、タイプ産地、英名、属(属
 の和名)を記載。種の形態的・色彩的特徴をできるだけ成長段階による変化を踏まえ
 て解説。次に、生息環境、国外での分布状況、国内での分布状況を記載。また、各種
 の生息状況、生息環境、および習性を長年の観察経験に基づき詳述。
◉各写真には、標準和名・性別・ステージ・体色・サイズ・撮影場所・水深・撮影年月
 日を記載
◉巻末に和名索引と学名索引を付した
ご予約受付中・内容見本--> Topページに戻る
ABOUT SEARCH FREE SEARCH

Copyright (C) TohoShuppan all rights reserved.