さまざまな関係でつながっている会社と宗教。天理教、聖徳太子信仰、キリスト教、イスラム教と企業など、会社のなかに見られる宗教活動や経営者の宗教的信念、また従業員の宗教的文化背景などに焦点を当て、人類学的な記述と分析を試みる。日本、フランス、イギリス、カナダ、マレーシアなどの事例を考察。 |
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会社のなかの宗教
中牧弘允 |
日置弘一郎 |
編 |
国立民族学博物館教授 |
京都大学経済学部教授 |
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A5判・上製・268ページ |
定価 本体3,800円+税
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ISBN978-4-86249-146-6 |
2009年 8月 刊行 |
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■主要目次
はしがき 中牧弘允・日置弘一郎
序論──会社文化と宗教文化をめぐって 中牧弘允・日置弘一郎
一 会社と宗教
二 会社文化と宗教文化
三 テイラーとタイラー
四 本書の構成
第一部 日本の会社と宗教
第1章 「お道」と企業経営
──天理教信仰と事業が融合する論理のありかと実例 住原則也
はじめに
一 天理教の教えと企業経営の論理的整合性
二 職業・家業が日常における「陽気ぐらし」実践の重要な場であること
三 教理実践者の実業家──諸岡長蔵と日比孝吉
むすびにかえて
第2章 企業の経営倫理構築にみる宗教的エートス
──昭和三〇年代の八幡製鉄所における社会科教育を例として 金子毅
はじめに
一 「インフォーマルな人間関係論」を重視した社会科教育
二 「個人・人格」の概念をめぐる比較文化論的考察
三 テキストの作成とその背景
おわりに
第3章 企業家と太子信仰 神崎宣武
はじめに
一 社訓・社是にうたう「和」
二 聖徳太子の唱えた「和」
三 太子信仰の広がりと浄土真宗の展開
四 職人集団による太子講の組織化
五 学校教育の指針への引用
第二部 欧米の会社と宗教
第4章 空間のブランディング 松永ルエラ
一 会社空間と「ブランドスケープ」の出現
二 事例一・東京都内の携帯電話会社フラグシップストアの設計
三 事例二・テスコにおける宗教的メタファー
結論──ブランディングされた空間の解釈
第5章 「社食」機能のフランス型拡充プロセス
──“経営家族主義”から“新・社会的同志愛”へ 市川文彦
はじめに
一 現代フランスの昼食事情と社食
二 史上初の百貨店、史上空前の大<社食>
三 現代フランス企業における<社食>機能の多重化
四 新・”社会的同志愛“の装置としての<社食>
おわりに
第6章 スピリチュアリティを取り込む北米企業──企業文化の創造 村山元理
はじめに
一 スピチュアリティという言葉
二 経営学の新興領域としてのスピリチュアリティ
三 スピリチュアルな渇きの社会的背景
四 カナダでも職場のスピリチュアリティがブームに
五 サウスウェスト航空の成功
おわりに
第三部 会社と宗教の経営
第7章 企業社会の秩序形成と「クウェーカーコード」
──テイラーの二〇世紀からキャドバリーの二一世紀へ 三井泉
はじめに
一 分析のフレームワーク
二 イギリスにおけるクゥエーカー企業家の発展とその思想的特長
三 二一世紀の企業社会のモラルコード
おわりに
第8章 祈りと感謝をめぐる宗教システム──宗教経営学の視点から 岩井洋
はじめに
一 宗教経営学の視点
二 西欧カトリック社会における奉納画
三 日本における奉納画
四 奉納習俗と宗教システムの動態
結論
第9章 企業経営行動と宗教──行動への「圧力」を媒介として 岩田奇志
一 問題と視角
二 三つのエスニック集団を取り巻く環境の違い
三 各エスニック集団の経済活動状況と華僑資本の経済的浸透
四 独立期における各エスニック集団の経済的位置
五 環境の「圧力」と行動へのドライブ(衝迫)
六 企業経営行動に駆り立てる生存への「圧力」と宗教
結び |
本書は国立民族学博物館の共同研究「会社文化と宗教文化の経営人類学的研究」の成果である。 |